おかしな話だ
天体観測
群馬と新潟の県境にある小高い山に向けて

中西実は車を走らせた。

中学校の教諭として2年生の理科の授業を受け持っている。

学校が夏休みとなり、中西自身もようやく休暇が取れた8月の夜。

中西は自身の趣味でもある天体観測をするために

東京から遠く離れたこの山へ向かっていた。

夜でもまぶしすぎる都会の明かりと、排気ガスで汚れた大気が蔓延した環境では

満天の星空は到底見ることが出来ない。

それにひきかえこの場所は

空気も澄み切っていて

闇をくすませるような強い光は一切ない。

車を降りた中西は、その清々しい空気を胸いっぱい吸い込んだ。
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