先生に囚われて
「じゃあ、先生さようなら」
言いたいことを言って、さっさとこの場を離れたかったので、クルッと身体を回してドアに手をかけた。
「こら、待て」
急に呼び止められて、小さく肩を上げて驚いてしまった。
やっぱり言い逃げはできなかったか、と恐る恐る振り返る。
「そんなこと頼んでねえよ。……歌。今日俺んちに来い」
近くのメモ帳を手にしていた。
そこにサラサラと文字を書き込み、乱雑に破り取ると私に無造作に渡してきた。
そこに書かれていたのは、住所と連絡先。
意図が分からずに困惑気味に見上げると、
「あいつに会わせてやるよ。今、うちにあるから」
切なそうに笑っていて、その笑顔に胸の奥が締め付けられた。
……あいつ。
りぃ君が言うあいつ、とは一人しかいない。
胸の奥底に閉じ込めていたあの時の気持ちが湧き上がる。
苦しい、苦しくて辛い。
だけど、それ以上に会いたい。
会いたいよぉ……っ。