先生に囚われて
「あっ……、恭弥」

振り向く前に急いで頬を手で拭って、声が震えないように気をつけながら返事をする。


「寒かったか?ほら、カフェラテ」

「寒かった〜。ありがと、あったかい!」

カフェラテの紙コップを受け取り飲み口に口を寄せる。
凍えた両手も温める。

さっきまでの冷えきった心がじんわりと熱を戻していく。


「……早く帰ろ」


カフェラテを持つ手と逆の手を恭弥に向かって差し出す。


大好きな恭弥。

一緒にいると安心して落ち着く。不安なことなんて一つもなくて、いつもいつでも絶対の信頼を寄せている。

りぃ君にだけ感じる、心が締めつけられるような切ない感覚を恭弥には感じなかった。



その意味に気づきたくなかった私は、私の心に嘘をついて知らないふりをする事にした。


……この気持ちは、切なさなんかじゃない。


無意識に首から下げた、さっきもらったばかりの指輪を握っていた。
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