先生に囚われて
「サエちゃん、どうして……歌」

絞りだすようになんとか出した声に、サエちゃんは事もなさげに答える。


「あー、お前こいつと仲いいんだっけ」


……『こいつ』。

その単語一つで、2人の関係の濃さを示された。


「えっ、あ……うん」

「ならちょうどいい。こいつ、早退させるから。叶、お前こいつのクラスに行って、5限の教科担当の先生に伝えてこい」


歌の背中をトントンと一定のリズムで叩きながら、あやすようにしている。


「え、サエちゃん……は?」

「俺はこいつの担任に言ってから、連れて帰る」


さらっと爆弾発言をするサエちゃんに、驚き戸惑いながらも、

「ま、待ってよサエちゃんっ!!」

「あ?まだなんかあんのか?」


歌を早く連れて帰りたいらしいサエちゃんは、呼び止める俺を鬱陶しそうに見る。


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