先生に囚われて
「え?」

一瞬、なんのことだから分からずに、首を傾げて聞き返すと、


「だから俺の目の前ではあんまり見るなよ、むかつくから」


続く言葉で先ほどまでのポケットの中身についてのやり取りの答えだと理解する。

私にとっては良いものだけど、りぃ君にはムカつくもの……?


よくわからないけど、とにかく今りぃ君の目の前で中身を確かめるのはやめておこう。


不思議がっている私の顔が面白いのか私を見て、鼻で笑ったこの意地の悪い色男は、


「また明日な」


と私の頭を引き寄せて髪に顔を埋めるようにしながら囁いた。



そして、今度こそ私を車から出すと、何事も無かったかのようにあっさりと車を走らせ去って行ってしまった。



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