女子高生名探偵の事件簿
三人にとって、改札口のない駅は初めての体験だった。
周りを見渡すと駅前の一等地というのにもかかわらず何もなかった。それどころか民家さえも見つけることができない。うっすらと積もった雪には足跡もなかった。この駅に人の出入りがないことを証明していた。
「とんでもないところにきちゃったみたいね・・・。」
ユミがぼそっといった。三人のはく息は三本の白いすじを立てた。
「えーっと。ここからバスに乗らなきゃ。」
ヒカルはガイドパンフレットを見ながらいった。
「えーっと。その辺にバス停。無い?」
ヒカルは周りを見渡した。真っ白のじゅうたんの上に直立するバス停。その赤い独特の目印が雪の白さに映えていた。
ユミはバス停に駆け寄った。
「こんなところでバスをどれだけ待つのかなぁ。」
ユミが不安そうにいった。
ユミの後ろにリサが駆け寄った。毛糸であまれた帽子と上着。マフラーを装備しているリサはふわふわで見るからにあったかそうだ。ヒカルはリサに抱きついた。
「どーしたの。ヒカルちゃん。」
リサがびっくりして声をあげた。
「だって、リサ。あったかそうなんだもん。」
無邪気なふたりの笑顔をよそに、ユミは時刻表をにらめつけていた。
「どーしたん。ユミ・・・。」
ヒカルがユミに駆け寄った。後ろから毛糸でモフモフなリサもふたりの荷物を担いできた。
バス停の時刻表には赤い張り紙がしてあった。
『郷バスは本日を持って八十年の歴史の幕を閉じました・・・ありがとうございました。』
「そんな勝手な・・・。」
リサが愕然とした表情になった。
「こまったな。この辺に民家はないし、歩くったって・・・。」
ユミが頭を抱えた。
ヒカルはパンフレットを手早くめくった。
「そうだ。ヒカル。目的地である小僧谷温泉に電話すれば・・・。」
ユミは叫んだ。
「うん。でも、電話番号。乗ってないみたいなんだ・・・」。
ヒカルはすまなさそうにいった。
ユミはヒカルからパンフレットを受け取った。今回の天体観察の概要と小僧谷温泉の案内があっさりと書いてあるだけだった。
「そんな。」

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