陰陽(教)師
この一軒家に『出る』という噂がついて回るようになったのはここ二か月ほどのこと。

半年ほど前に、この家にたった一人で住んでいた老婆が亡くなったのがきっかけだった。

老婆の遺体を発見したのは週に一度、定期的に彼女のもとを訪れていた役所の人間だった。

自室で和服姿のまま、事切れていたという。

外傷はなく、警察は自然死と判断した。

老婆には身寄りがなかったらしく、遺骨の引き取り手は現れなかった。

いわゆる孤独死というやつで、その背景から、老婆の死は地元紙の三面記事を飾ることにもなった。

その後、主を失ったこの家は売りに出されたが、いわくつきの家ということで買い手がつかなかった。

その結果、そのまま空き家になり、様々な噂がささやかれるようになった。

・家の前を通りがかると人の声がする。

・その声は老婆の声。

・その声は「ひもじい」と言っていた。

・それは老婆の死因が餓死だったかららしい。

・先日、家の中で人影を見た。

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