狐に嫁入り!?


ウタクは困ったように目を細めた。

それから青い瞳で私を捕え直す。


「帰れ。さっき大神様が荒れた拍子に、入口の結界が壊れた。もうすぐ……ナライと、皐月が来る」

「やだ……」


このまま人間界に帰ったって、未練が残るだけだよ。

私は小さく首を左右に振った。


「帰ってまた参拝してくれればいい……

「そんな……」


そんなんじゃ、私の気が収まらない。


「供え物は、ウニでいい」

「無理」

「ならアワビにしてやろう」

「無理だよ」

「やっぱり京豆腐の油揚げがいいな」

「ていうか、帰らないから」


生死の境でする会話じゃないよ。


こんな時にまで……我儘言うなんて。


二人とも落ち着いてるみたいだけど、大神様の暴走が収まったわけじゃなくて、慌てる気力がないだけ。
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