世界の果てに - 百年の光 -

オレはゆっくりと、地面から起き上がる。


覚束ない足取りは、徐々に冴えていく頭と共に、しっかりとしてきた。



…相手は、エルとリオだけを拐って行った。


それは、二人の方が価値があると思ったから?


それとも、他に理由が…?


「………」


顎に手を添え、ちらりとクリスを見遣る。


クリスを連れていかなかった理由が、運べなかったからだとしたら。


オレも一緒に残された理由も、同じ可能性が高い。


「相手が少ないか…非力か」


どちらかと言えば、前者のような気がした。


力がないなら、こんな不意討ちは避けるだろう。


相手の人数が少ないんだとしたら…そう遠くには、行けないはず。


「…行こう。クリス」


オレたちの荷物も持ち去られている所を見ると、オレたちを襲ったのは人拐いか何かだろう。


早く探し出さないと、二人が危ない。



クリスの手綱を引いて一歩を踏み出すと、何かに躓いた。


「何…、鍵?」


拾い上げると、それは小さな鍵だった。


暫く見つめてから、自分のポケットにしまい込む。



僅かに地面に残った足跡を頼りに、オレはクリスと共に、再び歩き出した。


< 239 / 616 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop