我が家の妖怪様
「なぁ、泰葉。親父はどれくらいで力を使えるようになった?」
「英司とお主の持つ『力』は違う故、はっきりとは言えん。だが、大体どの術者もひと月もあれば」

 ひと月か。
 今で俺は二週間。後二週間で『風』を使い熟せるようにならないと、泰葉にも迷惑を掛けることになる。

 俺が『力』を使えない分、泰葉が俺を護る為に戦わないといけない。今日みたく俺の『力』を試す為に、篝みたいなやつが来ないとも言えない。

 何とかしてマスターしないと。

 一息つき箱に神経を集中させる。泰葉に言われたように、風の音に耳を傾けてみる。しんと静まり返る部屋に、僅かな風が流れた。
 その流れに乗るように箱を開けてくれないかと、お願いする。お願いした後、かたかたと箱が音を起て蓋ががたがた言い始めた。

 なるほど、『お願い』するのも有りなのか。

 きっと泰葉や親父が言うやり方とは違うんだろうけど、誰でも他人の命令で動くのは嫌だろう。
 ましてや、俺みたいな新参者の命令なんて、聞けと言う方がおかしな話しで。だったら、初めはお願いするのが筋だろう。

 もう少しお願いしたら、蓋が開くかも知れない! 頑張ってみようと、神経を集中し始めた俺の耳に、勢い良く扉の開く音がした。

「泰葉ー! 久しく会ったのだ、飲むぞー!」

 入って来たのは日本酒一升瓶を片手にした篝だった。既に何処かで飲んだのか、少し酔っ払っているみたいだった。
< 21 / 43 >

この作品をシェア

pagetop