我が家の妖怪様
 酒を全て注ぎ終え席に戻れば、空を飛んでいた流烏が群真さんの肩に止まった。群真さんは静かに立ち上がると、隣に座るお兄さんに耳打ちをし、お兄さんと二人して席を離れて行った。

 暫くすると、違う席の親族も立ち上がり席を離れて行く。何事かと辺りを見渡す人もいれば、式神を飛ばす人もいる。
 ただならぬ雰囲気が会場を包んだ時、それは起こった。

 結界の入り口を束になった魑魅魍魎がこじ開けようとしている。それに一早く気付いたのは、ずっと空にいた流烏で。
 結界の入り口に急ぎ行けば、篝と龍神の守護者が魑魅魍魎を入れまいと、結界が壊されないように押さえ付けていた。

「群真さん! 冬真さん!」
「悠斗君は危ないから下がりなさい!」

 冬真さんが数珠を手に何やら呪文を唱えながら俺に下がれと言う。しかし、家を壊されてはと、俺は泰葉に魑魅魍魎を倒すよう命令した。

「泰葉! お前なんざ居なくとも俺達だけで十分だ!」

 結界を押さえながら言う篝に泰葉は鼻で笑うと、扇を一振りし風を巻き起こした。その突然起きた突風に篝達は足元を掬われたのか、ぐっと歯を食いしばり入り口を押さえた。

「篝、頼んだぞ」

 龍神の守護者が呟くと、この突風の吹く中炎を起こした。炎と風がくるくると絡まるのを確認すると、泰葉がまた扇を扇いだ。ごぉっと、音を起て炎が揺らめくと、冬真さんが呪文を終え入り口目掛けて紙を投げ付ける。
 その紙は泰葉の起こした風に乗り、炎と絡まれば火の龍となり真っ直ぐに結界の入り口を通り抜け、魑魅魍魎達を炎で包んだ。

「死して尚、反省するが良い」

 冬真さんが言えば、炎がどんどん小さくなり魑魅魍魎を吸い込んで消えて行く。俺は初めて見る光景に目を奪われていた。
 『術者と守護者の力が合わされば、凄い力が発揮される』これが、泰葉が話していたことなのかと。
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