我が家の妖怪様
「矢倉啓太、水神の守護者を持つ水の術者や。皆さんよろしゅうに」

 そう言うとまた帽子を深く被り直し、俺を見つめた。俺を見つめる啓太の前に、水神の守護者が現れると結界を修復したと言った。

「啓太! お前は勘当したと親父さんから聞いておるぞ!」

 啓太を知る爺さんが声を挙げ言えば、啓太は呆れた顔をして爺さんに術を掛けた。

「ぐっ…!」
「爺さん、真実は曲げて教えたらあかんよ?」

 水溜まりを頭にだけ被せ、まるで溺れるようにじたばたと動く爺さんを助けようと、周りにいた術者が啓太に向かい技を掛けるも、啓太は爺さんを盾にして技を上手いこと避けていた。

「止めろよ! 爺さん離せよ!」

 俺は声を荒げ出すと、風を起こし啓太に向け飛ばした。啓太は不適に笑うと、水の盾を創り上手く風を避けた。

「泰葉! 風雅!」

 俺は二人に啓太から爺さんを救うよう命令した。風雅が技を啓太に仕掛けた隙に、泰葉が爺さんを助け出す。上手く連携さえ取れれば、この二人なら出来る。
 二人が啓太に飛び掛かる瞬間、水神の守護者が風雅の足を水の鎖で繋ぎ止めた。そして啓太が呪文を唱えると、泰葉の動きが止まった。

「なっ!?」
「ふんっ、新参者が」

 そう捨て台詞を吐くと、爺さんを離し守護者と共に俺達の目の前から姿を消した。爺さんは咳をしながら、あの二人を追えと術者達に命令すると、親父達の手を借り会場へと歩いて行った。
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