ピアス
 顔が青ざめたのが分かった。
 背伸びをするようにして中を覗いたその瞬間、わたしはハッと息を呑んだ。
 落としそうになった苹果の袋を辛うじて掴む。
 背後で、傘が水たまりに落ちた音がした。
 白いタイルの上に、秋江さんは浴槽に寄りかかるようにして座っていた。
 秋江さんの手元に、ナイフが落ちている。
 手首から流れる真紅とも云える血が、浴槽の水と混ざり、徐々に水の色が濃くなっていく。

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