未定
今はもう、そんなことちゃんと覚えちゃいない。


いや、嘘だ。ちゃんと覚えている。



まだあいつは7歳だった。



その頃俺は成人して、まもなく努力が認められ内裏(貴族が生活する場所)で働けることが決まった。



就職して、オヤジからもらったスーツを着て、仕事に向かう。オヤジが「ちゃんとした所で働くんだ、身なりくらいきちんとしろ。」と言って就職祝いに贈ってくれたもんだ。



宮廷での仕事も大分なれた。俺の仕事は主に大臣の補佐や宮廷の見回り。時々、経理なんかもしている。



いい就職が決まって、嬉しいが正直あまり毎日が楽しいわけじゃねぇんだ。



見回りをしていると、たまに簾(すだれ)の向こうから声をかけてくる姫さんもいるらしい。まあ俺はこの生まれつきイカツイ顔のせいで声をかけてくる女なんていねぇがな。



宮中の中は基本和室だ。そして貴族の姫たちはみな十二単(じゅうにひとえ)を着ると決められていた。貴族の男たちもすげー昔は着物だったらしいが今はそんな時代じゃない。役人である俺たちなんてもってのほかだ。


そして貴族の姫達は結婚した相手以外の男に顔を見せてはいけないという決まりがあった。
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