オリオンの砂時計

大学をサボって私は車で田舎の道路をくねくね走る。青い看板だけを頼りに。制限速度なんか吹っ飛ばす。80キロをこえて窓を開ける。金星の『七色の風』をかけて合わせて歌うと絡まった泥色のような気分が幾らか紛れる。サボる時は大抵、市立図書館か、お洒落な喫茶店とアンティークショップの入った大規模なホームセンターと決まってる。とりあえず頭を占める化け物を追い出しにかかるため、寂れたスーパーの食品売場に向けて走る。田舎だから食料安く買えるのはそこだけだ。駐車のラインど真ん中に車を乗り捨て店内に山積みの¥99―のイカフライとコアラのアーチ、他に12コ入のシューアイス、わらびもちを買い物カゴにぶっこんでレジの列に並ぶ。並んでる間も気が狂いそうだ。ハヤクシテ…ハヤクハヤクハヤクハヤク……!!!!!支払を済ませ車内に駆け込む。さっきの買い物袋に手を突っ込み菓子袋を開けつつ片手でブロック塀前に移動。菓子類を獣どころじゃない、獣より酷い勢いでがっつきはじめる。やりだしたら食料が無くなるまでとまらない。大丈夫。目の前は壁。大丈夫。誰もミテナイ。ダイジョウブ。ワタシノコンナ…ミニクイ・スガタ。ダイジョウブ…。
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