ビター・キャラメル
ふたりとも自分勝手なんだから。
彼は子猫のような目であたしを見つめ、「もらって」とお願いをする。
くそう、イケメンめ。見とれちゃいそうだ。
大体話がおかしいのだ。
もらう方がお願いするならともかく、もらってくれとお願いしている。
そのうえ傍観者だったはずのマスターは彼の味方をするし。
「ね?」
どうやら、もう逃げられないらしい。
「…ハイ」
あたしは力なく返事をした。
彼は嬉しそうに箱に入っている携帯を取り出してあたしに手渡す。
「アリガトウゴザイマス」
ああ、もらってしまった。