美女と珍獣

「よっ、トーマス!」


数秒後、現れたのは白いスーツに身を包んだ長身の男の人。


くっきりしたハーフっぽい顔だちに、背が高く脚が長い。

しっかりセットされた髪型に、漂ってくる甘い香水の香り。


見るからに、アレ。

ホスト。



「レイジ……。しごと、帰り?」

「そうそう。あ、君が麻伽ちゃん?」


「は、初めまして……」


キラキラオーラを出しながら、こっちを向いたレイジと呼ばれた男の人に、あたしはとりあえず挨拶をした。

ていうか、何であたしの名前……。


「ミユキから聞いた通りだね」

「ミユキさんから?」

「うん。超可愛い子だって言ってたの期待はずれじゃなかった」

「そ、そんなことないです……」


頬を染めるあたしに向かってニコッと笑う男の人。


絶対ホストだ。

それ以外にない。


「あ、俺レイジっていうんだ。トーマスの世話、大変でしょ」

「世話……ですか?」


あたしが言葉に詰まっていると、珍獣さんの不服そうな声がした。


「……レイジ、アサカ。俺、忘れないで」

「おー、悪い悪い!」


小さく縮こまりながらこっちを見ている珍獣さんは、ホントに子供みたい。

いじけたように指先で床をなぞっている。


「……マジで聞いてた通りだわ」

「え?」


ぼそっとレイジさんの零した言葉に、あたしは首を傾げた。

レイジさんは取り繕うかのように笑って、気にしないでと言った。


気になりますよ……。

そうは思ったけど、敢えて口にはしなかった。



「じゃあ俺もう帰ろうかな……。貴重な睡眠時間だし」

「え?もう帰るんですか?」


今来たばっかりなのに、とあたしは呟いた。


「レイジ、何しに、来た?」

「別に何も。麻伽ちゃん見たかっただけ。じゃあまたね、麻伽ちゃん」

「あっ、はい……」


そのまま去っていくレイジさんをミユキさんのときと同様あたしはただ見送った。




なんか、珍獣さんの知り合いって……。

うん。


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