冬のための夢

忠士の風景

大きな団地の群れは子供の頃は宇宙戦艦の連合艦隊を思わせ、忠士の心をワクワクさせたものだった。

小学校の時の集団登校もいつもたくさんの人数で通った。大集団の登校は忠士にとって気持ちのいいものだった。
それはまるで、巨大空母から発進する最新鋭戦闘機に自分がなった気分だった。

それが今は自分自身がそこしか帰る所がないちっぽけな飛行機になっている。
そしてその飛行機の航続距離は極端に短く、予備校とゲーセン、その位だ。連合艦隊も近頃はくたびれ始め、壁にはヒビが目立つ様になっていた。

そう思う時、決まって守には決して言わないが、守の事を羨ましいと感じた。
          
しかし、忠士自身には一人暮らしなどできるわけがなかった。
< 28 / 119 >

この作品をシェア

pagetop