リリック・ラック

2、3回コールするとぴたりと音が切れ、ワカメの低い声が聞こえた。


『ポチか』

「うん。悪いね、着信に気づかなくてさ」

『今、大丈夫なのか?』

「うん」


濃い付き合いだから分かる。明らかに暗い声のトーン。

あたしはデートの結果をうっすらと理解した。

モヤモヤと雨雲みたいにどんよりしたものが胸の中に生まれる。

沙綾はやっぱり、あたしのことを気にしてしまったんだろうか。

ワカメへの好意は、あたしに対する罪悪感には勝てなかったんだ、きっと。

すっきりしないな。

こんな結末、とっても後味が悪い。
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