重力地獄の決闘
 ここは惑星トロンⅡB。地球によく似た外観をもつ惑星である。

 その外観だけなら、即時移住可能惑星に見える。

 もちろん、大気組成は窒素と酸素、2酸化炭素を主成分とする準地球型のものであるし、太陽系人類にとって有害な成分も含まれていない。気温も比較的温暖で、過ごし易いはずである。

 だが、この無人だった惑星に人が住むには、特殊なドームの中だけに限られていた。

 なぜか?

 それは、トロンⅡBの重力に問題があった。

 トロンⅡBの重力は、地球の重力に換算して、25Gある。

 生身の人間がそんな重力に耐えられるわけがない。

 150メートル級外洋宇宙船ジャッカルは、そういう悪条件の中を少しずつ降下している最中なのであった。

 気を許せば、すぐに重力の齶が牙を剥くのである。
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