とある姫の許婚
その頃ちょうどお城にはサターニアのカイル王子一行が到着しました。

カイル王子は馬車から降り、城を眺めました。

王子は噂通り、美しい顔立ちで、まるで乙女のようなきめ細やかな肌をしておりました。しかしその表情は少年のような好奇心に満ちておられました。

「案外小さな城だな」

王子はポツリと呟きました。

「アリヤ王国は資源に乏しく国土も狭い故、財政状況はよろしくないのでしょうな」

小太りの従者が答えました。

「親の都合で急に結婚だなんて、ホントにいい迷惑だな。私はまだ良いがルシア姫が気の毒だ」

二人は歩きながら話し始めました。

「私は今日はバンダス王にお願いするつもりだ。大切な一人娘であるルシア姫だ。この小さな国に何の利益も生まない婚約は止めてはどうかと」

「王子!それは王がお決めになったこと。王子がどうこう決められることではありません」

小太りの従者は言葉を続けました。

「それに何も利益がない訳では無いのです。王子と結婚することでこの国は存続し、サターニアの恩恵を受けられるのです」

「同盟国になるのか?」

「まぁ、似たようなものです。それにこの結婚はバンダス王からの申し入れなのですぞ。そもそもサターニア王国からして見れば、アリヤ王国はあっても無くても余り影響はないのです」

そこまで聞いて、カイル王子はウーンと唸りました。

「それなら貴族の息子でも養子に迎えれば良いことではないか?何なら私が婿に来ても良いが」

「王子はお人よし過ぎます……」
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