ひねもす月
「もうちょっとだよ」


小花柄のワンピースをまとった今日のミナは、一見、品の良い物静かな少女に見えた。

祖母が選んだのだろうワンピースは、型が古くて、おしゃれとは言い難い。
これはこれで、真っ直ぐで純朴な雰囲気を醸し出しはするけれど……カナタは、せっかくここまで来たのだから、ついでに服も何着か買って帰ろうか、と思案した。


「この中だよ」


田舎にはないビルやマンションなどの大きな建物を首が痛くなるくらい見上げながら歩いていたミナの目に、ショッピングセンターの派手な色合いはどう映っただろうか。

高さはさしてないものの、面積は相当のものだ。
各階のウィンドウに貼られたテナントの大きな広告や垂れ幕が、色とりどりに二人を迎えた。


「2階の奥だって」


入り口の案内板で確認して、店内に入る。

エスカレーターに乗ると、ミナが戸惑った表情でカナタを見た。


そういえば、祖母の家のあたりには、エスカレーターもエレベーターもないのだった。


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