光の子

揺らぎ





…‥ …‥ …‥ ‥…

長い、長い、母の告白だった。


西側に面したキッチンの窓から、強い陽が差し込みはじめた。



「心の準備って?」



広香は、尋ねた自分の口調に少しの冷たさが帯びてあることに、はっとした。



広香の母は娘のそんな反応すら、予期していたのだろうか。

ただ穏やかに広香に答えた。



「母親として、娘の恋愛に口出しする心の準備よ」



「そんなの」



母は、分かってる、という風にうなずいた。



「勝手な話よね。
娘がいようが、さんざん自由気ままに恋愛してきて、再婚も失敗したうえに、不倫なんだもの。
そういう、母親なんだもの。口出しする権利もないわよ」



広香は、ことばを失った。
母がいま口にしたことを、自分が心の底で実際に思っていた、ということに自分で驚いて。


私、お母さんのこと、そんな風に思っていた?



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