光の子

海流







アドレナリンが高まって渾身の力がボールに蹴り込まれると、

ゴールネットに向かう白い物体はボールではなく、自分の魂の一部みたいに思える。


矢楚の魂はネットを揺らし、新しいチームメイトの数人は練習中にもかかわらず軽く拍手をくれた。



視察に来たブィットリアの監督が、満足気にうなずいているのが矢楚の目の端に映った。


チームの呼吸はまだつかみきれていないが、

上げられるパスに食らい付いてゴールをひたすらにめざすFW(フォワード)は、いまの自分に合っている。


広香と別れたばかりで頭の中がぐらついているから、
戦略を頭に入れてゲームを動かすようなMF(ミッドフィルダー)は、荷が重い。

とはいえ新入りが、すぐにMFを任されるわけもなかったけれど。




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