光の子





遺体の引き取りはどうするかと警察に尋ねられて、

車は、父が港に沈めたその一台しかうちにはないし、

家族で運転できる者は、他に母がいるが、とても行けるとは思えないと矢楚は答えた。


それならば、
遺体は葬儀屋に頼めば代理で引き取り、自宅まで運んでくれると警察は事務的に教えてくれた。



電話で応対する葬儀屋は丁寧かつ親切な口調で、
すらすらと今後の流れを説明してきた。



自殺者の葬儀も通常業務のうちなのだ。



説明を受けるうちに胸が黒く塗り潰されていく。


深淵が果てもなく広がり、矢楚の中で何かが死に絶えていった。





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