光の子

めざめ



中三 初夏


「また来てるぞ」  


知也(ともや)がさりげなく耳打ちして、矢楚は廊下がわの窓を見る。

ここ二週間ほど、ふたりに繰り返されているやりとりだ。


三年になってしばらくすると、休み時間のたびに、廊下に立って矢楚を見る女子が現われた。


艶やかな長い髪が印象的な、華のある顔立ちの少女。
その女子が、自分を見ているんだとクラスメイトに聞かされるまで、廊下にその子が毎日立っていることすら、矢楚は気付いていなかった。


あらためてその子を見たが、矢楚の知らない顔だった。

矢楚とは違う小学校から入学した子だったし、放課後は飛ぶようにクラブチームへ移動しサッカーに明け暮れているので、

自分と同じクラスの女子以外とは、知り合う機会もない。




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