光の子

「だから、広香は月みたいに踏張ってくれないと。俺が暴走したり、ぐらぐらブレないように」



月のない夜だったから、広香は心の庭に月を浮かべてみる。

この地球をゆっくり回す月の引力。

地球に力を与えて、安定させている月の引力。



「正直ね。驚いたんだ。
さっそく広香が、俺のペースに巻き込まれてるから。走りだしてるでしょ、気持ち」



そうだ。走りだしてる。

どうしようもなく、こんなとこまで駆けてきてしまった。



「矢楚がそんなふうに思ってるなんて、知らなかった」


「俺も言うつもりなかったよ。
でも、仕方ない。
憶えていてよ、オトコは狼なんだ」



広香は笑ってしまった。

最近男らしくなったとはいえ、矢楚にはまだすこし、少年のあどけなさが残っているから。