好きです。
そんなわけで、コンクールに出展することになったあたしは、首から一眼レフをぶら下げていた。

どーしよう。

どーしたらいい?

手のひらに収まらないカメラを手に、あたしは深いため息を漏らした。



参加するって言っても、実際参加するための写真を撮るのは、すごく大変だ。

黒く硬いカメラに視線を落として、あたしはもう一つため息をついた。


本当に、どうしよう。


出品作品のテーマは自由だし、好きなものを撮ればいい。

撮りたいものを、撮ればいい。

たったそれだけだ。

でも、たったそれだけはとても難しい。

しかも、あたし写真まともに撮ったことないのに……。

「はぁ~」

本当、さっきからため息しか出ない! ため息しか出てくれない。

黒いカメラを手に、あたしはやる気なく返事をした間抜けな自分に対して、腹が立つのを通り越して、泣きそうになった。

首から下げられたこのカメラは、お父さんのおふるだ。

一度、このカメラを借りて写真を撮った。それが、あたしが写真部に入るきっかけだった。

その時、とてもいい写真が撮れた。その写真は、今でも忘れない。

草の上にのった朝露の写真だ。緑の葉っぱに乗った、丸いきれいな露が、太陽の光を浴びてキラキラ光っている写真。

そういう写真を撮りたくて、あたしはお父さんにお願いしてこの一眼レフをもらい、高校入学と同時に写真部へ入部した。

いい写真、好きな写真、素敵な写真。

そういうのを撮りたかった。

でも、思ったように撮れなくて、入部して二年になるけど、自分がこれだ! って胸を張れる写真は、一枚も撮れなかった。
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