Honey Sweet Melody
 コンコン、と唐突に生徒会室のドアがノックされた。紗和がドアに向かい、ドアを引いた。

「はーい。」
「飯島さんは…いますか?」
「かのーん!ご指名入りましたー!」
「…あのさ、毎回そのホストみたいなのやめない?」

 明らかに事態を面白がっている紗和と目が合った。はぁ、とため息をつきながらも華音はドアに向かう。

「生徒会の人間だって思われてんじゃない、華音?」
「はぁーありえない…。」
「…あの、話があるんですが。」

 野球部のエースだということは知っている。

「帰ってこいよな。」
「分かってるって!行ってきます。」

 華音は生徒会室を後にした。

「あーあ。華音もモテるねぇー。いいの、大樹?」
「何が?」
「だから、華音がまた呼び出されちゃったよ?しかも野球部のエースに。」
「華音は断るよ。」
「まぁなー…だって華音には『お決まりのセリフ』があるもん。」
「…ああ。」
「だから大樹はコクれないんだもんねー。」
「紗和、うるさい。」


* * *

 辿り着いたのは屋上だ。この季節は、春風が心地よい。

「話ってなんですか?」
「…俺と、付き合ってほしい。その俺…飯島のこと、前から可愛いなって思ってて。」
「えぇ?あっ!そーいうことかぁ…。」

 今更納得する。話というのはこの話波だったのか、と。最近はあまりこういうのがなかったから気付くことができなかった。

「で…返事は…?」
「ごめんなさい。あなたとは付き合えません!」
「であの『お決まりのセリフ』が続くの?」
「え?何その『お決まりのセリフ』って…?」

 お決まりのセリフとは何だろう。自分に口癖があったとは思えない。

「『自分が好きになった人としか、あたしは付き合わない』ってやつ。」
「あーそれそれ!言おうと思ってたの!ってそれがお決まりのセリフなんだー。でも、あなた…えーっと…名前は?」
「…俺のこと、知らないの?」
「ごめんね、あたし物覚えっていうか人の名前と顔覚えるのニガテっていうか…。でも、あなたが野球部のエースってことは知ってるよ?」
「俺、サッカー部だけど…。」
「えぇ?ってなんかごめんなさいっ!で、お名前は…?」
「藤堂だけど…。」
「じゃあ藤堂くん、ほんとーのほんとーに申し訳ないけど、あなたとは付き合えません。じゃ、あたし、生徒会室の掃除しなきゃだから。」
「あ、ちょっと待って。」
「え?」
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