チューリップ
距離感
2、3分すると優斗が戻ってきた。

「ごめんなぁ」

優斗は甘えるように沙弥に寄り添ったが、背中を向けられてしまった。

黙ってそっとくっつけていると、

「急に放り出すなんて酷い」
「ごめん、もうしない」

と、確かに会話をしている感覚がある。

その感覚は、沙耶の中にあった、彼に対する恐怖感を少しずつ薄めていく。

「本当にごめんな、沙耶との時間、もっと大切にしなきゃダメだよな」

そう言って髪を撫でて、優斗は、恥ずかしそうに続けた。


「……あっ、もしかして、心配してくれてる?」


えっ、それ、自分から言っちゃうんだ。

戸惑う沙耶に、まるで赤ん坊をあやすかのように、優斗は優しく微笑んだ。

「可愛いなぁ」

彼は沙弥を離すことなく、抱っこされたままの格好で二人はおしゃべりをした。

はっきりとした他人の存在をしめすものは、まだ何もない。

嫌な予感も、ちょっと想像してみたりはしても…
沙耶の方からなにかを探るようなことも、なんにも、なかった。

彼はあまりたくさんを喋らない人。
余計な駆け引きもダサい言葉もない。

でも、強くて、優しくて温かくて、幼い少年のように、時おり強く甘えてくる優斗が、愛しい。

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