alternativeⅡ
結局一言も発しないまま、蒼真は基地の門を潜ろうとする。

振り向きはしない。

何一ついい思い出などない日々だった。

たとえ『最期の地』で闘志の刃が砕け、力尽きたとしても、もう蒼真は二度とここへは戻らない。

凍てついた喀什の地で、拾われる事なき屍として散るのみだ。

未練もなく、基地を出て行く。

その時。

「元気でな」

聞こえてきた言葉に足を止めた。

「気をつけるんだぞ」

「俺達の代わり、果たしてくれよな」

「何もしてやれなくてすまねぇ」

「妹さんの事は心配すんな。墓は守ってやる」

「終わったら帰ってこい、いつでも部屋は空けておく」

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