Voice

「へぇー。

今日は、いるんだぁー。」






聞き覚えのある声に振り向くと、

そこには、

あの時、更衣室であった集団がいた。






「仕事はどうしたの?

もしかして、…降板?」






笑いながらそう言う一人に

優が冷たく言った。





「頭と目、悪いんじゃないの?

梓君も授業出てるじゃん。

同じクラスでしょ?」





ふと、

隣りのクラスを見ると、

確かに梓はいた。




バスケを選択したらしい。

ボールを持って、

友達に囲まれながら笑っていた。






「一緒にしないでよ!

梓君は多忙の中、

さっき登校したんだから!」






「あら、美紀だって、

今登校したの!


ってか、

同じドラマに出るんだから、

スケジュールが一緒なのは、

当たり前でしょ!」







「あんたさっきからなんなのよ!」




「何って、

美紀の親友よ!

あんた達こそ、何様?!」






授業中にも関わらず、

目の前で争いが始まったらしい。




この時の事を

よく覚えてない。



とにかく、


眩暈がして


ほとんど記憶が無くて。



立っているのが

精一杯だった。






「もー、

何なの、あれ!


美紀一人だったら、

間違え無く、

危害加えられてたし!



…ん?待てよ。

このまま、美紀を一人にしたら…」







…気持ち悪い。



駄目だ。

やっぱり先生に言って、

保健室で休ませて…。






「美紀を放っておけない!

今日は、

私と一緒にバレーにしなさい!!」






「…えっ?」





「行くよ!」と、

手を引っ張る優。





抵抗する力なんて無くて、

されるがままにバレーコートまで行った。







「じゃあー始めるぞー!」





先生の声が聞こえた。

どうやら、始まるみたい。






「美紀!

気合い入れていくよ!


…あれ?美紀?どうしたの?」






「優、私、気持ち悪い…。」





そう言った気もするし、

言えなかった気もする。




どうにか覚えていたのは、ここまで。




後は、

周りの人達の悲鳴と

優の私を呼ぶ声。




それから、

フワっと空を飛んでいるように

気持ち良い感覚に、


なんだか安心して、




そのまま、意識を手放した。



< 353 / 369 >

この作品をシェア

pagetop