超能力者だけの世界で。

《氷世界の王》



*《氷世界の王》*





「はぁ…。今年も冬が来ましたよ。」



青年は喪服姿で墓の前に立っている。

線香の匂いが充満している。

冬の風は冷たかった。



「青崎さん…?」

「はい。何でしょう?」



青年、青崎氷河は誰かに呼ばれたような気がして後ろに振り向く。

後ろには小さい少女のような女性が立っていた。



「いつもお早いんですね。」

「確か…、雹夏さん。」

「はい。いつもありがとうございます。」



氷河の恋人であった紗李菜という者のお墓である。


その友人、春風雹夏。
毎年のようにこの時期に会っていた。



「青崎さんは、優しいんですね。」

「え?何がですか?」

「毎年のように必ず忘れずに来てくれているでしょう?」

「それは…。晴花が居ますから。」

「その子は君の子では無いんでしょ?」

「はい。俺は彼女と遠距離恋愛していただけですから。」



噂は1人歩きをして、
氷河の嫁さんという事になってしまった。

氷河はまだ独り歩き者だ。
ずっと、前から…。




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