ひみつのはら
10.のはら

 気づいたら、あたしは知らない部屋にいた。


 見たことも、聞いたこともない場所。


 あまりに静かで、何だか絵のなかみたいで。


 夕方おひさまが沈んだあと、電気を点けないでいるような、すごく――

 すごく、さみしい感じの部屋。


「あ、もしかしてこれ、夢かな?」 


 そうだ。夢だ。


 生まれてはじめて、夢の中で夢って気づいた!


 ふしぎな感じだな。きっと、空を飛んだり魔法が使えたり……なんでもできるんだろうな。


 けれど、この部屋はやな感じ。


 どうせなら、お外がいいな。


 出口はどこだ?(早くしなきゃ)――あ、あそこかな?(今なら大丈夫)


 出るとき、もう一度その部屋を見回した。


 子どもの背じゃちゃんと分からないけど、けっこう広いんだ。(もうここにはいたくない)


 ソファーもテレビも、うちのより全然大きい。


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