不器用な僕たち

『ベルマリの涼と付き合っています』なんて言えねぇもんなぁ。

だからと言って、「興味ないから」って何をそんなにクールな態度してんだよ。

家に帰れば「涼ちゃん、涼ちゃん」って耳にタコができるほどうるさいクセに。


学校でも外でも兄貴とのことを話せずにいる千亜紀は、家に帰り着くと毎日のように部屋伝いに俺を呼ぶ。



「でねっ、涼ちゃんがね……」



まるで、言いたくても言えないストレスを発散するかのように兄貴の話をする。

捌け口になっている俺は、半分以上も話を聞いていなかった。



「……それでさぁ……、もうすぐ夏休みなのに、涼ちゃんてば『こっちにおいで』って言ってくれないんだよね」

「えっ?」

「ねぇ、何か聞いてない?」


上目遣いで俺を見る千亜紀。

この探りの入れ方は昔から変わっていない。

上目遣いで可愛く聞けば、きっと俺が口を割ると思っているんだ。

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