不器用な僕たち

家にも学校にもマスコミがくるだろう。

学校の友達からも問い詰められるだろう。

千亜紀だけじゃない。雅人も、親父もお袋も。千亜紀の家族も。

恋人は千亜紀だけだと言い張る、僕だけの問題じゃないんだ。


「……涼……」

「――……分かりました」


この世界に身を置いた以上、守るべきものがある。

千亜紀との関係を続けていったら、千亜紀だけじゃない、他の人たちの生活さえも侵害してしまう。



僕と来須ミクの事務所は『ギャラップ』に多額の金を積んだ。

正確な金額なんか僕は知らない。


偽装交際のスクープが掲載された『ギャラップ』の発売日前日。

仕事を終えてマンションに帰り着いた僕は、部屋の電気をつけることもせず、携帯を取り出し千亜紀に電話をした。


電話のむこうの千亜紀はひどく喜んでいて、矢継ぎ早に雅人や学校のことなどを話してくれた。

僕はそんな千亜紀の話を一通り聞いたあと、いつもと同じ声のトーンで言った。


< 122 / 162 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop