不器用な僕たち

「……最低だよ、あんな男」


吐き捨てるように言うと、私は机の上にあるノートパソコンの電源を入れた。

ウィーンという小さな機械音を響かせながらパソコンが立ち上がると、私は検索サイトの小窓にカチカチと文字を打ち込んだ。


【Belgian Malinois 笹峰涼 彼女】


Belgian Malinois(ベルジアン・マリノア)。

『ベルマリ』という愛称で呼ばれ、そして涼ちゃんがボーカルをやっているバンド。


物心ついた時からずっと一緒にいた涼ちゃんが生活の拠点を別世界に置いたのは、私が13歳の時だった。

涼ちゃんはいつもギターと一緒で、私はギターを爪弾く涼ちゃんの姿を見ながら育ったようなものだ。

私が何かリクエストすると、ギターで音を拾いながら歌ってくれた。

小学校の頃、友達と喧嘩して落ち込んでいた私のために『仲直り』という曲を即席で作り、気持ちの良い澄んだ歌声で励ましてくれた。


そんな優しい涼ちゃんはミュージシャンとしてデビューしてからも変わらなかった。

だけど、あの華やかな世界に長いこと身を置いていると、やっぱり変わってしまうものなんだ。


【ゲスト:涼は一般人と結婚しているよ!】

【ゲスト:結婚なんかしてないって!】

【ゲスト:インディーズバンドの子と付き合ってるって聞いたけど、どうなの?】

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