子うさぎのお世話

静かに忍び寄る冬の影

「久しぶりだね。…時春」


それは…
思わぬ訪問者。

時春は驚きに目を見開き、

「…英彰……」

彼の名をつぶやいた。

「ほんと大きくなったなぁ。僕より背は高いみたいだね?」

それは時春の従兄弟、藤間英彰だった。

驚く時春に構わず英彰は楽しそうに眼鏡ごしに目を細めて笑っている。

「…なんで、あんたがここに来るんだ?」

いつもいつも掴み所がない英彰だが、
今日は胸がざわめいてしょうがなかった。

英彰はにこりと穏やかそうな微笑みを見せると…

「子うさぎちゃんをもらいに…ね?」

「………!!」


やっぱりだ……!

こいつは雪兎を狙ってた……!!


雪兎の成長を待って…そして今、現れた。



「…俺が、うさを渡すとでも…?」

声を押し殺し
唸るように言い
英彰を睨み付ける。


「まさか!…でも、奪うつもりできたからね。本当に美しく育ったなぁ。小さな頃から稀にみる美少女だったけどね。…見た瞬間思ったよ!あぁ、この子を手に入れたいってね…!」


そのセリフに時春はギリ…と歯を食いしばり自分の拳をぎゅっと握りしめた。


「ロリコン野郎が……」


時春の暴言にも英彰はどこ吹く風だ。
大人の余裕を見せつけ相変わらず笑みさえ浮かべて見せる。


雪兎と会ったのはほんの数回…。
それでも10年もの間、虎視眈々と爪を磨いできたのだ。

我が従兄弟ながらよく似た英彰に時春は吐き気さえ覚えた。



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