月と太陽

神野に依頼があったのは市長銃撃事件の10日前。
依頼人は反政府団体の黒田という人間だった。

神野のが日本に来たのは4年前だと言う。
『神野』というのが本名かどうかは誰も知らない。
むしろ国籍すら。

わかることは少なく、神野は日本人としては長身の180cm台後半で、焼けた顔には細かい傷がいくつもあり顔立ちは日本人。
腕には大きな裂傷痕と銃創がある。
10年前まではヨーロッパの国の外国人部隊に所属していた。らしい。
それ以前のことは誰も知らない。


「請けてもらえますか?」
抑揚のない声で黒田は神野の目を見た。
神野は黒田の示す書類を見ながら指はキーボードを叩いていた。

「これから考える。二日後こちらから連絡をする。」

ノートパソコンをたたみ、カップにわずかに残ったコーヒーを一気に飲み神野は席を立った。とくに反応もなくコーヒーにティースプーンを入れる黒田。

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