月と太陽

「初めまして香坂可那です。」

カフェのボックス席、可那と猪狩彰一が向かい合わせに座っている。

「大方は聞いていますので、こちらから伺いたいことは一点、なぜ金田哲を?」

猪狩という男はうつ向いた猫背の体勢から可那を上目遣いのような格好で見上げる。

「私の人生はもう金田を殺すためだけのものです。」

と言って何かの用紙をテーブルの上、可那の前に差し出した。


「5000万円?」

生命保険の証紙だと理解した上で、可那は猪狩に聞いた。

「余命を半年と宣告されてから4ヶ月が過ぎました。
私にはこの生命保険を受け取るべき家族がもういません。
後日そちらに受取人の書き換え手続きを行います。
ですから、どうかあの男だけは殺したい。」

「生命保険の件は了解しました。
こちらが聞きたいのは、なぜ?です。お答えいただけないのであればお帰りください。」


猪狩は顔を紅潮させ、バタン!と立ち上がった。

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