月と太陽

━私は何をしているのだろう。
━私はどこにいるのだろう。

少女は蜘蛛の巣を見る。少女は蜘蛛の巣を描く。
毎日毎日何度も何度も。

この頃から三女は『幼女』というよりは『少女』という雰囲気を帯びていた。



少女は両手で蛾を捕まえて綺麗な蜘蛛の巣に放った。
もがくほど身動きが取れなくなる蛾、
もがいてももがいても崩れることのない多角形。

蛾を中心とした多角形。それを永遠と描き続ける。



━永遠。



『このままじゃママもアナタも永遠に不幸なんだから。』

この屋敷に住むようになる前に夕紀に言われた言葉。
その時に憶えた言葉。━永遠。

少女は多角形の中心へと向かう蜘蛛を確認すると、蛾を強引に糸から剥がし宙へと放った。

『アンタ達お金が目当てなんでしょ。』
『汚いところから来たんでしょ。臭うわよ。』
『アンタ達同じ家に住むなら食費払いなさいよ。』
『その安っぽい服で近くに寄らないでくれる?』

最近は長女と次女に代わる代わる悪態をつかれている。毎日。

出ていけと長女に言われて出ていったこともある。
すぐに長谷川に連れ戻された。

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