君に笑顔を ～地味子に恋したイケメンのお話～

「じゃあ、瑞希の親は…」

「親はいるの。母と、血は繋がっていないけど父と、半分だけ血の繋がった妹もいるわ。でも、私は家に居られなかった…」

「どうして？」

（どうしよう…）

瑞希は、本当の事を言うべきか迷った。

目をつぶると、保護されて施設に入るまでの記憶が蘇る。

義理の父親の酒臭い息と、容赦ない自分への執拗な暴力。
その時の痛みと、死への恐怖。

そして、何よりも瑞希を絶望へ追い込んだのは、義父の暴力から自分を庇ってくれなかった実の母親。

そして、何度も繰り返し投げ付けられた、母親の次の言葉だった。

“おまえを見てると、アタシを捨てたオトコを思い出すんだよ。おまえなんか、産むんじゃなかった！”

瑞希の閉じた目から涙が溢れ、こめかみへと流れていった。