踊れ その果てで
「戒は、兄さんみたいなんだ」

 ぽつりと発し、再び戒の目を見据えた。

「兄弟はいないけど、そんな感じがするんだ」

 戒は、困ったように微笑む翼に目を細める。

 翼の言葉に驚きながらも、何故か少し「そうかもしれない」とも思った。

「俺にも兄弟はいない」

「戒って、本名はなんて言うの?」

「……捨てたよ」

「そか」

 つぶやいて草原を見渡した。

「じゃあ、僕もいらない。今の名前でいいや」

 男は、感情の読み取れない翼の瞳をじっと見下ろした。
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