キスしかいらない
プロローグ〜葉菜子〜
高校の入学式。
エスカレータ式の学校だから、周りはほとんど知った顔。

短い春休みの報告をしあって、緊張感なんてこれっぽっちもなかった。



式が始まってもなんとなく浮ついたクラスメイトたちの中。

私は、壇上で挨拶を始めた人から目が離せなかったんだ…。



細身の濃いグレーのスーツがよく似合う。
遠目でも整った顔立ち。茶色がかった髪は後ろに流して。


驚くほど若くって。
話し方は、なんだか軽くって。
声は低く優しい。

理事長だというその人。

私、木町葉菜子(キマチハナコ)がずっとずっと片思いしている人なんだ…。
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