嘘つき【-ring-】
ありのままで、
■■■


「お待たせしました」



店員さんがにこやかに微笑む。
綺麗にラッピングされた細長い箱を確認して袋を受け取った。


「ありがとう」

「またいらして下さいね」

柔らかな声に頭を下げれば、衝動的に入った紳士向けの専門店を後にした。


…結局、ネクタイにしてしまったわ。


以前から店を出歩いても決まらず、ギリギリになって今日、二時間悩んだ結果、例年通り。男性が何を貰えば嬉しいのか、なんて見当がつかない。ましてや相手が彼だけに。
小さく苦笑を落として、一緒に持っていた小袋と合わせる。


中身は手作りのショコラケーキ。ブランデーとビターチョコは彼の好みに合わせた少し大人の味。

これくらいしか取り柄がありませんもの。


喜んでくれるといい、と心配しながらどうしても彼の満面の笑みは浮かばなかった。




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