糸を手繰って
バタバタと準備をして、あたしの目を気にすることなく濃厚なキスをする両親を横目に、元気よく声を出した。


『いってきまーす!』


かろうじて聞こえたようで、いってらっしゃい、と2人から言われたあたしはテンションが更に上がった。


なんだかんだ言ってもあたしは仲良しな両親が大好きだ。


あんな夫婦になりたい、と憧れてもいる。


さっき見た“赤い糸”がもしかしたら世に言う“運命の赤い糸”だとしたら…


やっぱり両親はそうだったんだ、と嬉しい気持ちになった。


見えるはずがないのに、あたしには今見える“赤い糸”。


ちょっと胡散臭いけど、好奇心をくすぐられて、あたしのもどこかにつながれてるのかな、とワクワクし出した。


駅でも電車内でも道を歩いていても、道行く人の右手小指が気になる。


通学仲間のリンカからは、なにキョドッてるの?なんて言われながらも、頭の中は糸のことでいっぱい。


通勤通学時間だからか、パートナーと一緒にいる人は少ないから糸が光っている人はほとんどいない。


そして、糸がない人や、糸がくすんでいる人もいて、ちょっぴり切なくなったりする。


勝手にね。
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