女王様と王子様
「山本さんが相手にする人なんて、藤臣くんレベルじゃない?」


……何?

上靴を履き替えていると、不愉快な会話が聞こえた。眉をひそめて会話の続きを聞く。


「でも話してるところ、あまり見たことないけど」

「やめてよー!私 藤臣くん好きなんだから!」


…藤臣棗。
眉目秀麗、文武両道。
おまけに性格も誰にでも優しく、男子からも女子からも人望は厚い。
女子の中では密かに“王子”なんて呼ばれていたりする。

……気に入らない。
私は高校入学当初からこの男が気に入らなくて仕方なかった。
だから今日、クラス発表で同じクラスだと知った時は思わず舌打ちした。
イケメンで頭も良くてスポーツも出来て、その上性格も文句無しですって?
馬鹿にしないでよ。そんな奴どこの世界にいるっての?
何が王子よ!そんな妄想の産物と私を並べないでよね!

それから女子の話はもっぱら藤臣の話だったので、私はさっさと家に帰ることにした。


「山本さん!」


噂をすれば、というやつだろうか。
いや、噂をしていたのは私ではないけれど。

女子の騒ぐ声をBGMに、藤臣棗が私を呼び止めた。



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