きみへのおくりもの

誰だって壁にぶつかることはあるさ

5月のゴールデェンウィーク明けー
烏山区民センターの4階にある図書館。
サトシから頼まれた本を借り終えた和也とリュウジ。
エレベーターのほうに肩を並べて歩いている。 「あっ」
と和也。
「どうした?」
「あいつ…」
エレベーターの前には、1カ月程前朝の満員電車の中で小バカにしてきた開成の学生がエレベーターが来るのを待っている。
「知ってんのか?」
「あー。開成の超〜エリートさんらしくて、前に電車の中で会ったことがあるんだ」
「ふ〜ん。がり勉君ね」
そのとき、後方から駆けてきた6歳ぐらいの女の子がエレベーターの前で転び、抱えていた本が学生の足元に放り投げられた。
だが、学生はちらっと見ただけで再びエレベーターのほうに顔を戻した。拾って上げようていう素振りも見せない。
女の子は転んだまま、わ〜んと泣き出した。
リュウジが女の子に駆け寄って抱き起こす。 「もう大丈夫だ。痛いのはここか?」
「うん。くすっ…」 「よし、痛いの〜痛いの〜飛んでいけー♪」
赤くなっている女の子の膝小僧を撫でて、その手を大きく仰いだ。
女の子は次第に泣き止んだ。
和也は学生の足元に転がっていた本を拾って女の子に渡した。
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