no title
 


入学式も終わり、がやがやと騒がしい廊下は、自分のクラスへ向かう生徒で溢れかえっている。

そこにいるのはやっぱり男ばっかりで。

背中に、私の横顔に沢山の視線が突き刺さる。それがなんだか怖い。と言うか痛い。

賢太の制服を握る手に、思わず力が入る。



「ねぇもうヤダよ、私帰りたい」


「それ言うの何回目だよ…」



そう言って小さく笑う賢太の隣で、私はもう何度目かも分からない溜め息を零した。


教室が近くなるにつれて遅くなる私の歩調。
それに合わせてくれているのか、賢太の歩調もいつもより遅い。


でも、例え歩調が遅くとも、教室にはたどり着いてしまう訳で。



「…帰る、」


「おいおい」



教室の少し手前で踵をかえした私の首を、賢太の手が掴んだ。
じたじたと抵抗してみるものの、それはまったくの無駄な抵抗だったようで。



「はーなーせぇええええ…っ」


「誰が離すか、この馬鹿」



この数秒後、教室に強制連行されました。


 
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