最果ての月に吠える
意識の最果てに不快なイメージを引きずったまま眼醒めると、西日に染まる茜色の空を背負ってリューネが海岸に立っていた。





地平線を漆黒(シッコク)に染める夜の足音を数えるように見つめながら白い煙をあてもなく吐き出している。





その姿が片方の翼をなくした悲しい天使に見えた。





オレは車から降りて失った翼を求めている寂しそうなリューネの片側を埋めてあげたいと思ったのに、ギプスで固められた両足がそれを阻(ハバ)む。





遠くからゆっくりと迫ってくる痛みの波が全身を襲う。





それを拒(コバ)むこともできずオレは目を閉じ静かに受け止める。





「大江先輩? 起きたの?」





いつの間にか歩み寄ってきた明るく輝く潤んだ茶色のビー玉のようにキレイな瞳が、青く忍び寄る闇に包まれた車内を覗き込んだ。





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